歯周病治療
重症歯周病の患者数は、
糖尿病の患者数に匹敵する800万人と言われています
糖尿病の患者数に匹敵する800万人と言われています
歯周病とは、お口の中の歯周病を引き起こす細菌によって起きる感染症です。すなわち、細菌の攻撃に対する私たちの免疫力が低かったり、細菌の活動性が免疫力より強かったりすると、歯周病は進行して、歯肉や歯槽(しそう)骨(歯の周りで歯を支えている顎の骨)などの歯周組織を破壊していくようになります。一般に歯周病は、(1)歯肉炎 (2)歯周炎に大別されています。
歯肉炎は歯肉に限局した炎症で、歯槽骨や歯根膜(しこんまく:歯の根を取り巻く薄い膜)が破壊される段階までは進行していないものをいい、歯周炎は歯肉炎が進行して歯槽骨や歯根膜の破壊や吸収が生じる段階まで深く進行したものをいいます。以前は成人病とされていた歯周病ですが、近年では法的に生活習慣病と認定され、様々な全身疾患との相互的な関連性の研究報告もなされるようになり、歯周病の治療や予防に対する重要性は非常に高まりつつあります。
歯周病の発症メカニズム
通常、口腔内には正常な範囲で様々な細菌がバランスを保って存在しているのですが、これを口腔内常在細菌叢(そう)といいます。口腔内の環境を不衛生にしたままにしておくと、次第にそのバランスが崩れて病的な細菌叢を形成するようになります。それらの細菌を免疫力(主に好中球)で排除できれば軽度の歯肉炎レベルの範囲で治まるのですが、免疫力が弱く、それらの病的細菌叢を排除できない場合、細菌は組織内の深くに進入し炎症と組織破壊を繰り返して歯周炎を進行させていくようになり、また全身へも波及していくようになります。これらの歯周病の発症メカニズムに直接的または間接的に関与して炎症のサイクルを助長する要因(リスクファクター)には、[1]局所因子、[2]全身因子、[3]環境因子といったのもがあり、これらが複雑に関与し合って発症する多因子疾患が歯周病です。それらの因子を具体的に示すと次のようなものがあります。
局所因子
口腔不衛生(歯垢〈しこう:プラーク〉、歯石〈しせき〉)。病原性細菌。咬み合わせの不具合(不適切な修復物、不適切な矯正、歯ぎしり、食いしばり、舌習慣)。歯並び。歯の形態。
全身因子
年齢。人種。体質。免疫学的異常、遺伝的疾患。ホルモン分泌異常。糖尿病。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)。
環境因子
喫煙。ストレス。定期的な歯の検診。栄養バランス。不規則な生活。社会経済的環境。
これらの因子をできるだけ改善していき、免疫力を高めることが歯周病の治療と予防につながることになります。近年、予防という言葉がしきりに使われるようになっていますが、歯周病も予防によってかなり未然に進行を食い止めることができる疾患のひとつです。
症状・診断
歯周病は慢性疾患で、その病状は徐々に進行していきます。症状は、歯肉炎の段階では、歯肉の赤みや腫脹(しゅちょう)、ブラッシング時の出血、しばしば疼痛(とうつう)などが主なものになります。この段階もしくは自覚症状がなくても定期検診などで歯科医院を受診していただくと、歯槽骨(しそうこつ)吸収などの組織破壊といった不可逆的な結果に至らずに良好な治癒経過を望むことができると考えます。しかし、歯肉炎や軽度の歯周炎の場合、その症状は生活上支障をきたすようなレベルになることはごくまれですので、自己診断をしてしまい、そのまま放置してしまうケースが非常に多いのが現状です。また、自覚できる炎症症状が一過性で治まったり、また発症したりを繰り返しますから、その症状が薄らいでしまうと治ってしまったかと錯覚をしてしまうことが多いのです。
したがって、この段階で歯科医院を受診される方は、非常に少ないようです。ところが、この歯肉炎や軽度の歯周炎の段階から進行した段階の歯周炎になると、知らず知らずのうちに炎症は深部に進行し、徐々に歯槽骨などの組織を破壊吸収していきます。そうなると、歯と歯肉の間に「歯周ポケット」という病的な溝ができてきます。この歯周ポケットは歯槽骨と歯根膜が破壊されていくとそれに伴って徐々に深さを増していきます。この深さが歯周病の進行段階の目安の1つになります。深さが増していくと、その間に入った歯垢や付着した歯石などは歯ブラシやうがいなどでは排出されず、歯周ポケットに残って長期にわたり歯肉や歯周組織を攻撃し、徐々に徐々に破壊吸収を進行していきます。
歯周炎の症状は、歯肉炎の症状に加えて口臭、排膿(はいのう)、歯の揺れ、歯肉の腫れといった症状が顕著に現れてきます。炎症が重度に進行した場合、歯を支えるだけの歯槽骨が破壊されてなくなり、歯の揺れや排膿、腫れ、疼痛などが激しく、物を噛めなくなったり、抜歯をしなければならなくなったりします。
治療
まず大事なことは自覚症状が顕著に現れる前に歯科医院で定期検診などを行い、歯肉炎の治癒や、歯周炎における歯槽骨や歯周組織の吸収が始まるのを未然に防ぐことが非常に大事になります。歯周病が発症して進行した場合、とくに重度に進行した場合は、その組織の健全な回復は非常に困難で、再生医療的処置を行わなければ失われた歯槽骨や歯肉は元に戻りません。したがって現状では、歯周病に罹患(りかん)した場合、リスクファクターを改善して歯周病がそれ以上進行しないようにする進行防止治療が標準治療となります。標準的な歯周病治療の流れは、歯周病の検査後に初期治療として局所因子の改善を行います。主に口腔不衛生の改善を行うのですが、具体的にはブラッシング指導や歯垢、歯石の除去および病原性細菌の駆除です。スケーラーという器具によって歯垢や歯石を機械的に除去し、場合によっては歯周ポケット内の不良な歯肉の一部も除去したりします。その後、抗生物質や消毒薬を貼薬します。
しかし、歯周病の進行状態によっては、初期治療だけでは治癒が見込めない場合も多々あります。その場合はフラップオペ(歯肉を剥離して歯石や不良な歯肉の除去)などの外科処置や、場合によってはGTR法(破壊吸収された歯槽骨や歯肉などの歯周組織を再生する外科処置)などの再生治療を行ったりします。これら一連の処置により歯周病が治癒したら、今度は再発および再進行しないようにメンテナンスを行います。メンテナンスは歯が口腔内に存在し続ける間は一生続けていくものだと考えていただいたほうがよいかと思います。
歯周病の治療に付随させて行わなければならない非常に大切なこととして、免疫力を高めるということがあります。前述したリスクファクターの全身因子と環境因子を改善し克服することです。近年、歯周病を助長させる因子として喫煙、糖尿病、骨粗鬆症、ストレスがよく取り上げられるようになってきましたが、それは次に述べるような報告が数多く出てきたためだと思います。
喫煙
非喫煙者に比べ、数倍(3倍前後)歯周病になりやすく、発症進行が早い。
歯周病の進行度のわりに発赤、腫脹などの自覚症状が少ないので気がつきにくい。
歯周病の進行度のわりに発赤、腫脹などの自覚症状が少ないので気がつきにくい。
糖尿病
免疫機能の低下、コラーゲンの合成抑止、微小血管障害、歯根膜細胞の機能異常、最終糖化産物AGEの炎症性組織破壊といった歯周病を促進させる原因が多い。
報告者によるが、2~4倍程度歯周病の発症リスクが高いという報告がある。また、血糖コントロールが不良なほど歯周病が重篤(じゅうとく)なものが多くみられたという報告もある。
報告者によるが、2~4倍程度歯周病の発症リスクが高いという報告がある。また、血糖コントロールが不良なほど歯周病が重篤(じゅうとく)なものが多くみられたという報告もある。
骨粗鬆症
歯周病も骨粗鬆症も骨の吸収が特徴となる疾患なので、その関連性が注目されている。
ストレス
免疫力低下と関係があるといわれている。
またこれとは逆に、歯周病が影響を与えているかもしれないと近年報告または推察されているものに次のようなものがあります。
これらのことから、歯周病を治療し予防することは口腔内だけではなく、全身疾患の治療や予防につながることに注目していただいて、治療に臨んでいただければと切に望むところです。
- 糖尿病
- 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
- 誤嚥性肺炎
これらのことから、歯周病を治療し予防することは口腔内だけではなく、全身疾患の治療や予防につながることに注目していただいて、治療に臨んでいただければと切に望むところです。
予後・生活上の注意
歯周病の症状がなくなり、歯肉も引き締まった健康な状態を保つことはできますが、進行した歯周病の場合、破壊吸収された歯周組織を回復することは基本的に不可能になります。しかし、近年では再生医療(GTR法など)の発達に伴い、歯周組織の再生回復がある程度可能になってきました。
歯周病に関して最も大切なことは予防を心がけることです。歯周病は別名「Silent Disease(サイレント・ディジーズ)」といわれるように、自覚症状がなく徐々に進行していきますから、歯周病の発見と予防のためにも、これといった自覚症状がなくても歯科医院を定期的に、最低でも半年に1回は受診して歯周病のチェックを受けることが非常に大切です。また、全身因子、とくに糖尿病や骨粗鬆症などかかっていないことに越したことはありませんが、すでにかかられている方は担当医師と相談してきちんとコントロールをし、予防をすることです。また環境因子の改善として、喫煙習慣の改善、食生活や栄養バランスの考慮、規則正しい生活、ストレスの発散を常日頃から心がけることなども重要なことです
歯周病に関して最も大切なことは予防を心がけることです。歯周病は別名「Silent Disease(サイレント・ディジーズ)」といわれるように、自覚症状がなく徐々に進行していきますから、歯周病の発見と予防のためにも、これといった自覚症状がなくても歯科医院を定期的に、最低でも半年に1回は受診して歯周病のチェックを受けることが非常に大切です。また、全身因子、とくに糖尿病や骨粗鬆症などかかっていないことに越したことはありませんが、すでにかかられている方は担当医師と相談してきちんとコントロールをし、予防をすることです。また環境因子の改善として、喫煙習慣の改善、食生活や栄養バランスの考慮、規則正しい生活、ストレスの発散を常日頃から心がけることなども重要なことです






